とにかくお兄ちゃんが優しい。家族に守られた菅原裕さんの子供の頃のお話し。

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小さい頃どんなお子さんでしたか、みたいなお話も聞いているのですが、ご兄弟とかいるんでしたっけ?

はい、2才年上の兄がいます。私は5人家族(祖父、父、母、兄、私)の一番下で、自分で言うのも何なんですがすごい甘やかされて育ちました。兄はとても優しい人で、お兄ちゃんに泣かされた覚えは殆どない。本当に優しい性格の兄です。

幼馴染が2軒隣に住んでいて、そこは下が私と同い年の男の子でそのお兄ちゃんが私の兄の1才上。いつもその4人で遊んでいたので女の子らしい女の子ではなかったです。いつも田んぼや川で遊んでて、お兄ちゃんが遊びに連れてってくれました。もしかしたら気を遣わせていたのかな?と今になったら思うけど、本当に全然手を上げられたりとかなかった。とても優しい兄です。

私、結婚していないんですけど、何かあったらきっと「彼は助けてくれるだろう」と勝手に思っています(笑)。あてにはしてないけど、心の中では頼りにしてる。信頼しています。

そんなに優しいお兄さんとか本当にいるんですね…!羨ましいです。
小さい頃運動とかは何かされてましたか?

小学校の頃ソフトボールをやっていて、ピッチャーで4番だったんです。でも、歯の矯正をしていたところにピッチャー返しを受けて血まみれになりまして、トラウマになりピッチャーを辞めました。運動神経はけして良い方ではないです。

でも、エースで4番だったんですよね?

走るの大っ嫌い。持久走とか最高に嫌いです。持久走とか3周位走って勝手にリタイアしてました。全く走る楽しさが理解できない。

ずるいですね(笑)。大人になってからランニングしよう、みたいなタイミングありませんでしたか?

あっ、ありました。やったことあります。ランニングしたタイミングが山から降りてきたばかりの時だったんですが、標高2300メートルの山小屋での生活で自然と高地トレーニングになっていたみたいで、いきなり結構走れたんですよ。「楽しい!」と思いました。でも、何をやっても長続きしない性格なので2週間くらいで辞めちゃいました。その後暫くしてからもう一度走ろうと思った時があったんですが、当然体が動く筈が無く、苦しくてダメでした。歩くのは好きで体力もあるしどこまででも歩いていけるんですが、走るって行為は私には向いてないです。

そんなに強く「走る」事に対して拒否反応を示すのって珍しいですね。子供の頃の遊びとか、走るのが基本じゃないですか。鬼ごっことか。

鬼ごっことかは好きでした。でも、純粋に「走る」ってだけのものが嫌いなんです。それに勝負事じゃないですか、リレーとか短距離走とかって。あのね、たぶんプライドが高いから負けたくないんだと思う(笑)。速く走れないから一番になれないじゃないですか。兄がとても足が速い人で、リレーの選手とかだったりしたので、おにいちゃんができるのに自分ができない、というのもあって走るのが嫌いだったんだと思う。

あぁ、なるほど。

山登りは好きです。ずーっと歩くから。体力はあるんでずっと歩けます。
あと、泳ぐのも嫌いです。クロールができないんですよね。息継ぎができなくて。クロールって息継ぎするじゃないですか。あっちを向いてこっちを向いて、足をバタバタして。理論が分からない。

今のお話を聞いていて、確かにクロールっていう行動を部分的に見たらそうなるけど、泳いでる人はそんなこと考えてなくて、一連の動作としてやりますよね。それを分解しちゃうんですね(笑)。

だから凄く理屈っぽいんです。
理解できないことができない。

読まないくせに一応マニュアルは欲しい人です。好きにやれ、と言われたらやるんだけど、あったら読みたいなと思う。なんか規定があるんなら教えてって。

ありがとうございます。少し話は変わるんですが、勉強とかはいかがでしたか?得意?

できません。全然できません。勉強嫌いでした。一番嫌いなのは算数。国語は大好きです。父が国語の教員をやっていたんですよ。あとで本の紹介にも関連するんですが、本だけは家に豊富にあって、うちはTVが見せてもらえない家で、ゲームも無いし、でも本だけは欲しいって言ったら買ってくれて。だから本がお友達でした。

算数はすごい苦手で、方程式とか公式が覚えられないんですよ。だめなところで嫌いと思ったら嫌いなんです、ずーっと。苦手意識が全然無くならなくて。夏休みの宿題とかは、最後にいつも算数のドリルが残っていました。

そうなんですね。

両極端ですね。算数、生物、化学は大嫌い。英語は大好きでした。いつも一番で。語学系が好きなんでしょうね。

確かに極端ですね。
話を聞いていると男の子っぽい感じがあるんですが、女の子特有の「グループ」みたいなのってどうでしたか?

小学校の時は、普通に女の子の友達もいっぱいいました。でも私立の中学校に行ったら27人のクラスに女の子が8人しかいなくて、これは結構自分の中では今のこの性格を決めたのは中1だったと思ってるんですが、その中でちょっと仲間外れにされまして。

たぶん2カ月くらいずっと一人でお昼を過ごして。私立なので給食が無くて毎日母が作ってくれたお弁当を持っていってたんですが、教室に居られないのでお昼休みずっとトイレで過ごしていてお弁当が食べられなかったんです。毎日トイレにお弁当を捨ててたんですよね。

つらいですね。

一回、うっかりお弁当を家に持って帰っちゃって。お弁当箱は洗って返すのが家のルールなんですけど、 台所にお弁当が入ったままのお弁当箱を置いて、まずは自分の部屋で着替えてこようとしたら、たまたま洗濯物を取り込んで戻ってきた母がそれに気づいて、でも母は気づかない振りをしてまた外に出て。

私はバレてないと思ってお弁当をキッチンペーパーかなんかにくるんでゴミ箱に捨てたんですけど、後で母に聞いたら「あぁ、学校で上手くいってないんだな。」と分かったと。まぁ、子供って本当に馬鹿ですよね。

それで仲間外れにされた経験があったので、頼れないんだな人は、って思って。2カ月もすると別の子が無視される様になったんですけど、私はそれが我慢できなくて。新しく仲間外れにされた子と話していたんですが、もうそれ以降私がターゲットになる事はありませんでしたけど、その事はずっと忘れられませんでした。

「 その経験があって、人には頼れない、強くなるしかないんだな。」と思ったからけっこう一人で居るのが好きなのかな?と思ってます。女の子グループは面倒くさいです。

中学校くらいってそういうのが一番多いですよね。

男の子ってないんですかね?

いや、ありましたよ。やっぱり定期的にターゲットが変わってみたいなのがあって。本当にクソみたいだなと。

本当にクソみたいですね。あれなんだんだろう?仲間意識を醸成する何かがあるんでしょうかね。何が楽しいのか分からないけど、一つのことを一緒にやっているわけじゃないですか。それが楽しかったのかな?

まぁでもそういう事があったので、基本的に群れるのは嫌いです。

そういう中でも気を許せる人はいましたか?

うーん、男子や先生と話してました。それがまた面白くなかったんでしょうね。でも、喋る人がいないから。お弁当箱の件で母が気づいていたので、たぶん保護者会みたいなところで話があって、そしたら先生は「気づいてるけどちょっと様子を見てます。」と言ってたので母も何も言わない事にした、という話を後から聞きました。それを聞いて「見てわかるんだな、先生ってすごいな。」と。だからその先生のことはすごい好きでした。信頼できる大人、って思ったんでしょうね。

でも、家があったからなんともなかったんだと思う。家庭が安住の場で、皆が守ってくれる場所だったので。

ありがとうございます。
ちょっと話を進めて、大学になると中高とは全然違う環境になると思うんですが、どのあたりの大学に行っていたんでしたっけ?

大学は八王子にある実践女子大学に行ってました。

一人暮らしとか?

一人暮らしは絶対ダメ、と言われていたので家から通ってたんですが、逆に大学卒業したら家を出てけ、というルールだったので、大学時代から一人暮らしに備えてバイトしてお金を貯めてました。

ちょっと話変わるんですけど、TVとか家に無かったじゃないですか…

あっ、TVはあったんです。あったんですけど見せて貰えない。見ていい番組もあったんです。わくわく動物ランドと、クイズダービーと、大河ドラマは見て良かったんですけど、いわゆるアニメーションとかドラマとかは全然見たことないです。もう少し大人になると見せてもらえて、でも高校生までは友達が話してるドラマとか全然分からなかったです。大学になってからやっと自由にTVが見られる様になりました。

やっと解禁されたんですね(笑)。中高生の時とかTVの話題とかあるじゃないですか。そういう時どうしてたんですか?

どうしてたんでしょうね。たぶん黙って聞いてたんだと思います。覚えてないんですけど多分本当にぼーっとしてたか、うちはTVが無い家だよというのを皆に分かってもらってたのかも。

今自分も子育てをしているので、何が子供の性格とか気質を作るんだろう?っていうのをよく考えます。生まれ持った性格はあるし、親、兄弟との関係、学校、今のTVのお話しとかもそうですし。興味深いです。

一応こういう事も聞いていて、大学時代の恋とか、素敵だなと思った人とかはいましたか?

あぁ、ゼミの先生が好きでしたね(笑)。でも別に結婚している人だったので。自分の知らないことを知っている人が大好きで。知識欲がすごいあって。

もともと初等科の教育免許を取りたかったんですよ。自閉症の学校があってそこの先生になりたかったんですけど受験に失敗して、なので特に国文学を学びたかったという訳でもなく入ったんですが、大学は楽しかったです。

好きなだけ遊べたし、バイトできたし、旅行も行けたし。大学4年の時のゼミは最高に良かったです。好きな本の「邪宗門」も先生に進めて貰ったんですが、ゼミで読書の幅もすごい広がりました。なので先生は私にとって何でも知っている人、すごい男性、まぁだから好きとかよりは憧れ、とかですかね。

尊敬という感じですね。

私あんまりそういう感情がもともと薄くて、恋愛感情とかそんなにないんですよ。たぶん。女子大だったのであんまり異性との接点もなくて、だから社会人になってからですね。好きな人ができたのも。

私がこういう恋の話とかを聞くのは、どういう人を好きになるか?というのがその人の事を凄く表していると思っているんですけど、好きなタイプとかはありますか?

自分の知らない事を知っている人が好きです。なんだろうな、例えば、数奇屋建築がすごい好きとか、焼き物にすごい詳しいとか、車がめちゃくちゃ好きとか。あと、自分が嫌いなものを好きっていう人は好きにならないですね。

分かります。好きなものは別でもいいけど、嫌いなものを好きって言う人とは一緒にいれないですよね。

なんかね、豊かに生きたいなと思います。自分の知っていることしか知らないと、すごい狭い世界で生きていくので、やっぱり知らないことを知る方が楽しいし、知らないことを知っている人は私にとって物すごい興味深い人なので。

結局いろいろ知りたいんですよね。人の事もそうだし。人の考え方もそうだし。あと、人が好きなものも、好きな人だったらなおさらその人の好きなものを知りたいし。知りたい。

ありがとうございました。人生で本当にいろんなことにトライしてきて、今、また新しいことに挑戦しているところなんですね。

菅原裕さんの大切な本の紹介一冊目
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